木々が芽吹き、動物もイキイキと躍動し始める4月、5月は、自然の変化だけでなく、転勤、進学、就職など年度替わりによって社会がざわざわし始めることも重なり、物理的に自律神経が乱れやすい季節です。自律神経は、心臓、血管、肺、消化器官、内分泌腺、生殖器など、すべての内臓や種々の体の働きを自動的に司っている神経で、私たちの意思とは無関係に24時間働き続けています。
自律神経には、交感神経と副交感神経の2つがあり、交感神経は心身を活動的に動かす時やストレスにさらされた時に優位に活動し、副交感神経は休息やリラックスする時に優位に活動しています。両方の神経がバランスよく、また柔軟に働くことが健康のカギですが、自律神経は刺激によっていつも揺さぶられており、バランスが乱れた状態が続くと心身が不調になります。私たちの体の仕組みは何百万年も変わっていませんが、社会はここ数百年で大きく変わり、夜であってもテレビ、携帯電話、パソコン、コンビニ等、昼間とかわらない刺激にあふれています。現代生活で酷使されている自律神経のバランスを改善したいところですが、残念なことに、意志の力でコントロールすることは不可能なのです。
けれども、私たちが自律神経を能動的にコントロールできる方法が一つだけあります。それは「呼吸」です。吸気に意識を向け、早い胸式呼吸をすると交感神経が優位になり、反対に、呼気を意識してゆっくりと息を吐くと副交感神経が優位になるのです。また、こころの状態も自律神経に影響します。興奮、焦り、不安、恐怖を感じているときは、交感神経が優位になり、呼吸も早くなっています。一方、穏やかで安心しているときは副交感神経が優位になり、ゆったりとした呼吸になっています。このように、唯一、自律神経とこころの状態を整えることができるのは呼吸なのです。さらに、深い腹式呼吸では、血中の酸素と二酸化炭素の交換が良好になる、横隔膜の動きによって内臓がマッサージされる、血液循環が改善される、といったさまざまなメリットもあります。
体と心がストレスにさらされ、交感神経優位になりがちな現代社会では、意識して心身を整えることが必要で、ゆったりと呼吸することは最も手軽に簡単にできる健康法で、仕事の合間や、夜寝る前、お風呂に入っている時など、ちょっとした時間を活用して行うことができます。疲れている時だけでなく忙しい時も、刺激から遠ざかる時間を持ち、ゆったりした呼吸を感じながら自律神経を整えるよう心がけましょう。ゆったりとした呼吸を続けていると、体は緩み、心は平和になります。呼吸法は、まさに令和にふさわしい健康法。呼吸を通して私たちが健康になるだけでなく、世界の平和に貢献していると思うと、一呼吸一呼吸がとても愛おしく大切なものに感じられます。